第1章

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大五郎は身がすくんで動けなかった。 「よっこらせっ」 まさるは、大五郎がいる茂みにジャンプして、着地をした。 「イテテ。運動不足で、腰痛いべ」 大五郎は何も言うことはできない。 「のぅ。ガキンチョ。目痛いんじゃ。何でかの?」 大五郎は、何も答えることができなかった。 「失明するかと思ったぞ。デブのくせに生意気なことしやがるのぉ。」 まさるはどんどん、近づいてくる。大五郎の鼓動はどんどん強まっていく。 「ガキンチョ、余裕じゃのぉ。両手ポケットに入れて、仁王立ちとは。また、なんか、塗るつもりなんかのぉ?」 「まあ、ええ。こっちこんかい。」 そう言うと、まさるは大五郎の首もとに右手を伸ばす。 (い、いまだ!!) 大五郎はポケットに入れていた両手をすばやく抜き出す。そして、その両手に握りしめたものを、まさるの両目にめがけておもいきり投げつけた。 「こ、こんのガキぃ!! ま、また目を。目がぁー!!」 大五郎は、まさるのその様子をみて、迷わず、まさるに体当たりをした。まさるは思った以上に、ふっとんだ。 大五郎は茂みから、必死の思いで這い上がり、またもや村の中へと姿を消していく。 「ガキぃー! 殺してやるべ!!」 すぐさま、まさるは立ち上がり、茂みから、這い上がり、村の中へと姿を消した大五郎を探す。 大五郎は、この村の家の見つからないと思った荷物と荷物のあいだに身を隠した。 (や、やった!!成功した!!!) 大五郎は、茂みに隠れているとき、草があるということは土があることに気づいた。大五郎もゲーム好きである。大五郎の好きなドラキューシリーズでこのような技があった。砂を相手に投げる目眩ましという技が。 それをヒントに大五郎は、手が痛かったが必死になり、土をかき集め、ポケットに入れた。まさるが、現れると大五郎はポケットに両手をいれ、いつでもその土をまさるの目に向かって、投げることができるように、土を両手に握りしめていたのである。 大五郎自身、まさかまさるを出し抜くことができるとは思わなかった。しかも一度、二度ではなく、三度も出し抜いたのだ。だが、四度目はないだろうと思った。なぜなら、いまの時点で大五郎が思いつくすべての手を出し尽くしたからだ。
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