第1章

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大五郎はとりあえず、自分の記憶をたどりながら、謎の村の入口を目指し、歩いた。もちろん、うろ覚えなので、謎の村入口にたどりつける自信はない。だが、自信はなくとも、行くしかなかった。 右を確認したり、左を確認したり、後ろを確認したりと誰かにみられていないか、まさるは追ってきていないかを確認しながら、歩いた。 すると、ひとつだけ電気のついた家が目に入った。それは見覚えがあった。 (あっ!) 大五郎はようやく気づいた。この電気のついた家は、まさるから逃げる途中で目についた家である。無我夢中で逃げてきたが、一軒だけ電気がついていた家があったのは覚えている。 (ということは、入口は近くかもしれない) 大五郎はそう思い、再び自分の記憶をたどりながら入口へむけて歩いていく。そして、ようやくみつけた。 (あった! 村の入口だ!) 大五郎が入口へ急いで向かおうとすると、あることに気付く。暗闇であるからはっきりとはわからない。だが、村の入口には村の住人が何人かいた。二、三名だろうか。ただ、そのなかにまさるはいないようである。 大五郎は嫌な予感がした。この村に入ったときは、人の気配すらなかったのにいまはまさるやら、まさるのお母さんやら、入口に二、三人待機しているやら、一気に村の住人が出てきている。 (もしかして、僕らを外に出さないでおこうとしてるんじゃ………) 大五郎はそう思うことしかできなかった。追いかけてくるまさる、そして、村の入口に待機する村の住人。タイミング的に、まさるか、まさるのお母さんがおそらく村の入口封鎖を村の住人に頼んだのであろう。 大五郎は、もう一度いまいる場所の右、左、後ろというようにしっり確認した。 (村の入口は一ヶ所しかない。もし、他にあったとしても暗闇の中でみつけられるわけないし、みつけたとしてもどこに出るかわからない。) そう考えると、いましばらく、できることはひとつしかないと大五郎は思った。なので、村の入口にいる住人がどこかに行くのを見逃さずに待つことにしたのだ。ただ、大五郎はそれに集中するあまり気づかなかった。 じつはさきほどから、今度は走らないように、気配を消すように、徐々に大五郎との距離をつめてきている、まさるの姿には全く気づかなかったのである。まさるは、大五郎が村の入口を見ているのを確認するとソロリソロリと大五郎の背後に歩み寄った。
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