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大五郎は、この村を訪れたときに最初、鬼が、窓から中を覗いた家へ連れてこられた。つまり、まさると呼ばれる男の家である。そして、その横にはさきほど、村の入口の見張りをしていた三人の一人である平八と呼ばれる男がいた。
平八という男は、まさると友達のような口ぶりで会話をしている。ただ、まさるとは違い、背も高く、がっしりとした体格だ。まさるも背が低いというわけではないだろうが、平八はまさるよりだいぶ大きかった。
それゆえ、大五郎を黙らすには十分な威圧感がある。大五郎は、平八と呼ばれている男に逆らおうとは思わなかった。
「おう、ガキ、はいれや。」
平八がそう言い、ドアを開ける。大五郎は、中に入らず、立ち止まっていた。
「オラッ!! ガキンチョ、さっさと入るべ!!」
今度はまさるが、大五郎の背中をドンッと押した。まさるの家の中にはいると、中は思っていたより、普通だった。床はすべて畳でだいぶ傷んでいるようだ。柱や壁は木材でできている。天井に関しては、ところどころ黒ずみがみられ、雨漏りしている様子がうかがわれる。
「ガキンチョ、なーに、ジロジロ見とる。こっちこんかい!!」
そうまさるに言われると、背中をまたドンッとどつかれ、畳のある部屋へと座らされた。
大五郎を中心にし、右にはまさる、左には平八という配置で座っている。そして、その真ん前には、客人をむかえるかのように木製の机が置かれている。
まさる、平八、二人とも何もしゃべらない。大五郎は、何が起こるのか、何をされるのか、それを想像するだけで、怖くなった。
(い、いまからどど、どうなるんだろう………)
そう考えると、お腹が痛くなってきた。
大五郎は、緊張するとお腹がいたくなるときがある。毎回ではないが、なかなかの頻度でお腹が痛くなる。特に胃が痛くなる。我慢の限界だった。
大五郎「あ、あのぉ。」
まさる「なんじゃ?」
大五郎「お腹痛いんで、薬飲んでいいですか?」
平八「すごい汗じゃの。飲んでいいが、変なことすんじゃねーぞ。」
そう言うと平八は、笑顔で「変なことしたら首折るぞ」といわんばかりのジェスチャーをした。
そして、大五郎は素直にリュックから胃薬をだし、リュックにいれてある飲み物でグイッと胃薬を飲んだ。
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