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大五郎は、胃薬を飲み、少しだけではあるが落ち着いた。胃の痛みは治まっていないはずなのだが、薬を飲んだという安心感から、だいぶ痛みが和らいでいる。
まさる「ガキンチョ、大丈夫か?」
大五郎「は、はい。落ち着きました。」
まさる「そうか、よかったのぉ。」
大五郎は予想外だった。てっきり、乱暴で凶暴だとばかり思っていたのだが、どうやら、そうとも言い切れないかもしれない。大五郎はそう思いはじめていた。
(いや、そうとはかぎらない。油断したらダメだ! 気を許しちゃダメだ! しっかりしろ!! 大五郎!!)
大五郎は、自分自身にそう呼び掛けた。
そのとき、奥から人がでてきた。まさるのお母さん、大五郎からみたら老婆である。
「おやおや。まさると平八をそえて、なかなか豪華な登場の仕方じゃの。」
そういうと老婆は、大五郎のまえに腰かけた。
「お主は、客人というわけじゃないんでのぉ。もてなしはしないからのぉ。」
最初は笑顔で語りかけてきた老婆の顔は、どんどん険しくなっていく。
「小僧、何の目的でこの村に来たんじゃ?」
大五郎は、予想以上の老婆の迫力に何も言えない。
平八「さっさと答えんと、痛い目あうぞ。」
まさる「そうじゃ。母ちゃんをなめたら、いかんぞ。」
平八とまさるの二人はこの状況を楽しむように、ニヤニヤしている。
老婆「耳がないんかのぉ。この小僧は。もう一度聞くぞ。なぜ、この村に来たんじゃ?」
大五郎「た、ただの探険です。な、夏休みに何か面白いことやろうって話になって。それで、この村にき、来ました。」
平八「探険だと? ふっざけやがって!」
平八が大五郎の胸ぐらをつかむ。
老婆「平八。まだ乱暴なことはしたら、いかん。まだじゃ。」
老婆がそう言うと、平八は大五郎の胸ぐらから手を離した。
老婆「お主は、この村のことどこまで知っとる?」
大五郎は、この村について知っていることは、何もないことを正直に話した。だが、鬼のおばあちゃんから聞いた話は黙っていた。
老婆「そうか。それで、残りの小僧はどこ行ったんじゃ?」
大五郎「し、知りません。ぼく、股間の傷口にムヒ塗って気絶しちゃって。そのあいだにいなくなっていたんです。う、うそじゃないです。ズボンにも血ついています。」
大五郎のズボンを、まさると平八が見た。どうやら、まさるも平八も大五郎の説明に納得したようだった。
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