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眠い
「―――、だね…」
仰向けで眠っている俺にふりそそいできた言葉で、夢から覚めた。
目を開くとそこには見慣れた顔。
幼さを少しだけ残した…だけど、自分と1つしか変わらない少年。
「――歩、いま何時…?俺、どれくらい寝てた?」
「今が18時だから、寝てたのは2時間くらい」
なんだ。随分眠った気がするのに、仮眠程度にもなっていないのか…と、かすかに薄暗くなった外を見た。
「さっき”可哀想だね”、って言った?」
「…そんなことより、ご飯つくったよ」
あ、話題をそらされた。
といっても彼が俺を憐れんでくれるはずがないので、その言葉は歩自身に言っていたのだろう
けど歩が進んで夕飯を作ってくれるなんて、一体どうしたことか…。
あまりの珍しさに思わず頬が釣り上がる。
「この前みたいに、味噌汁に洗剤入れてない?」
「…気づいてたんだ?」
「さすがに気付かないワケないっしょ」
あれは酷い味だったなぁと笑うと彼は気持ち悪い虫でも見たかのような顔をした。
うん、その顔が一番いい。
「味覚ないのかと思ってた」
「いやいや~そんなことないって、むしろ愛がなせる技じゃん。それに途中でお椀奪ったあげく謝ってきたのそっちだから」
血相を変えて「ごめん…調味料間違えた」ってさ
ねぇ、もう一回あの顔が見たい。
怖がらせないようニコニコしてるのに、やっぱり浮かない顔をしている。
「それとも、慰めてほしかった?」
と俺は首をかしげる。
そうでないなら、いつものように殴ればよかった?
胃液を吐くまで蹴ってやったらよかった?
俺が触ろうとするだけで酷く怯えてる癖に。だから飼いネコに引っかかれたくらいに思ってる俺の広い心が分かんない?
あぁでもこれ以上言ってしまうと、彼は泣く。
だから黙ってテーブルに座り、先ずは味噌汁に口をつけた。
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