おおかみを助ける

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* * * * * 放課後、久しぶりに依岡さんの部屋に上がり込んで息を飲んだ。 「あ、あの…」 「へー、オメガとやんの久しぶり」 「なんだ思ってたより、かわいーの来たじゃん?」 知らない男が二人、こちらを見てニヤニヤしている。 これは一体どうしたものかと、後ろにいる依岡さんを見上げると笑顔を浮かべて――― 「予定してたオメガが来られなくなってさぁ。歩が最近ひとりだし、そろそろ欲求不満かなぁって」 「ほーら、緊張してないでこっちこいよ」 「いっ……、いやっ!離してっ!!」 後ろから一人の男に抱きしめられ、ぞわっと鳥肌が立つ。 気持ちが悪い、嫌だ嫌だっ!! 「あ、そいつαだから、楽しめると思うぜ」 ―――自分がΩなのが嫌だった こんなに平凡なのだから、せめてβに生まれたかった。 両親はΩの息子に戸惑っていたけど、「ま、なんとかなるさ」と笑ってくれた なのに俺は――――、いつも自分(Ω)の性に負けてしまうから――… ============= 心臓の音が 興奮したような呼吸が 他人の臭いが、 すべて、気持ちが悪い。 「おーい、そろそろ出て来いって」 ふーっふーっと息を殺して風呂場の鍵を掛ける。 "汗かいてて気持ち悪いから、流してからでいい?"と言い訳して、逃げ込んできた。 スマホは取り上げられている。 「いい加減、歩も限界だろ?早く出てきて、一緒に楽しもうぜ?」 おかしい、発情期じゃないのに体が熱い… まさか久しぶりにオメガとヤレると興奮し発情したαのフェロモンにあてられたのか? ずるずると浴室の床にへたり込んでしまう。 普段ならこんなものに負けたりなんかしないなに、しばらく菊池ともヤッてなかったから…? 「ほーら、Ωちゃん。どうせ逃げられないんだから楽しもうぜ」 「あっ……」 熱が欲しい。 αが欲しい 鍵をあければ・扉を開ければ、 この苦しさから、解放される―――? 「はっ……っ、あ」 頼れる人はいない 呼べる名前もない…・ 涙はあふれるし、 息が苦しくて死んでしまいそうだ 「ほーら、歩。大好きな依岡さんだぞー?お前につらいことしたことなんかなかっただろ」 「あっ……?」 そうだ。だいすきな人だった… 何でこんなにつらい思いまでして、耐えているんだろう もう解放されたいあまり、ついドアノブに手を伸ばしそうになった。その瞬間 「誰の断りがあって、歩に手ぇ出してんだ」 怒りを含んだ声が外から聞こえた。
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