いらない

5/5
前へ
/63ページ
次へ
優しく…? 優しくって、なんだよ。 俺に覆いかぶさり逃がす気なんてない癖に。 一番嫌いな、まるで彼のような欲情したような目線を向けてくる。 「…らな、い…」 「はい?」 「…その気がないなら、優しくなんてしなくていい」 恐怖で擦れた弱々しい声でも、他に物音もしない部屋では、はっきりと聞こえたようだ。 「はっ、…ほんと最高だな、アンタ」 なにを興奮したように俺に鎖骨に吸いついてくるのか。 まるで獣のように熱のこもった舌を這わされ、噛まれ、舐められても…何も不快なだけで感じない。 「…っ、きもち…悪いっ」 「いいね、その目。抵抗するのを諦めてる癖に…あー、人の不快感ってどうしてこんなに気持ちぃのか…」 その紅潮した頬と視線に吐き気がする。 でも大丈夫。 これは菊池が俺にいつもやっていることだろ… もう慣れたはずだ。 考えることをやめれば、俺の体も勝手に動き出す 気持ちと体がついていかない。 こんな時は、Ω性のせいにできる… けど同じはずなのに、何かが… ―――――――ナニガ? 『……歩』 優しい言葉なんか いらないのに… 「……たすけ、て…」 死んでも思わないって決めてたのに…
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

189人が本棚に入れています
本棚に追加