189人が本棚に入れています
本棚に追加
優しく…?
優しくって、なんだよ。
俺に覆いかぶさり逃がす気なんてない癖に。
一番嫌いな、まるで彼のような欲情したような目線を向けてくる。
「…らな、い…」
「はい?」
「…その気がないなら、優しくなんてしなくていい」
恐怖で擦れた弱々しい声でも、他に物音もしない部屋では、はっきりと聞こえたようだ。
「はっ、…ほんと最高だな、アンタ」
なにを興奮したように俺に鎖骨に吸いついてくるのか。
まるで獣のように熱のこもった舌を這わされ、噛まれ、舐められても…何も不快なだけで感じない。
「…っ、きもち…悪いっ」
「いいね、その目。抵抗するのを諦めてる癖に…あー、人の不快感ってどうしてこんなに気持ちぃのか…」
その紅潮した頬と視線に吐き気がする。
でも大丈夫。
これは菊池が俺にいつもやっていることだろ…
もう慣れたはずだ。
考えることをやめれば、俺の体も勝手に動き出す
気持ちと体がついていかない。
こんな時は、Ω性のせいにできる…
けど同じはずなのに、何かが…
―――――――ナニガ?
『……歩』
優しい言葉なんか
いらないのに…
「……たすけ、て…」
死んでも思わないって決めてたのに…
最初のコメントを投稿しよう!