眠い

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歩side ------------------- 彼は、本当に最低な人間だと思う。 こんな奴がこの社会で頂点に立つαだなんていうから世も末だと思うくらいに。 嫌がる俺を押さえつけては 殴るし 犯す。 時には見世物のように扱われた。 「愛している」とか言いながら、俺がどんなに泣いても喚いても、聞こえていません。という顔をする。 それでも抵抗を続け、彼からの呼び出しを何度か無視した。 ―――3日間監禁され、心が折れるまでは 幸い彼は、こんな平凡なΩが珍しいだけで番が欲しいわけではないらしい。だから今はおとなしくしていれば飽きられる。 ただ、せめてもの抵抗で何度か嫌がらせをした…のに、何故か彼はそれを嬉しそうに受け入れる。 無邪気な笑顔を作っては 「もうしないの?」と聞く。 吐き気がするくらい、気持ち悪い。 「やっぱ君の抱き心地が一番いいなぁ」 「……」 「これって俺が君の事、愛してるっていう証拠だよね」 その俺の言葉に耳を傾けない人間の、どの口が愛を囁くのか。 愛なんて知らない癖に。 「君も俺のこと好きんなってよ…そしたら、もっと大事にしてあげるのに」 こんな時に、他人のように俺を"君"と呼ぶ。 優しい手つきで頭をよしよしされても、俺は何も感じない 彼は、可哀想な人間だ。 αだというだけ。 ただ歪で、一方的で こんな菊池雅之という人間を、どうして好きになれるのか
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