おおかみを助ける

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歩side ================== はぁ、はぁ…と荒い息をなんとか落ち着かせようとする。 扉の前でバタバタと大きな音や怒鳴り声が聞こえたけど 蕩けきった脳内では想像も理解もできない、疑問すら抱かない。 ただ―――菊池が来たことだけが、分かる。 また、俺を馬鹿にしてきたのか それとも、仕組んだのか…? 「歩……ここ、開けて」 「や、やだっ!!」 また酷いことを言われる もしかすると殴られるかもしれない… 「一人は逃げたし、残りの二人もそこで、っ、のびてる」 ガタッと何か倒れた音が聞こえたけど、それが何かは分からない 「大丈夫、だから…」 そんなこと言われも今は興奮状態よりも恐怖で、足がすくんで動くことができない。 でも…菊池に抱かれれば、熱が覚める… よく知った匂いと声、気配に、こんなに安堵している 覚えてる感覚と快楽にたまらず体が反応してしまう (なに、考えてんだよっ…!) これならまだ依岡達に抱かれた方がマシだったかもしれない。 「歩の匂いも…凄いから、たぶん薬飲まされてる…。病院、いこ?」 ここに抑制剤はないし、コイツらが目を覚ますと面倒だから、お願い…。 まさかの言葉に躊躇う。 確かにここに来る前に「これ奢り」といってペットボトルのスポーツ飲料を貰った。 あの中に、発情させるための薬が…? それを知っていたから、薬が効くまでシャワーを浴びることを許してもらえたのかもしれない…。 「な、なんでっ…来たんだよっ」 そんな優しい嘘にほだされてたまるかっ 「俺は、もう―――君に、泣いてほしくない」 「信じられないっ」 俺を捨てたくせにっ あんなに一緒にいたいって、離さないって言ったくせにーーーー! 扉を開けた瞬間、押さえつけられるかもしれない 「——————だったら、俺のを包丁で刺したら、信じてくれる?」 ――――えっ 信じられない一言に真っ白になった 「俺は…歩が信じてくれるなら、いい。 ちょっと…待ってて」 なんだよ、それ… そんなことしたら最悪ショック死するかもしれない…。 なんで、傷つこうとするんだよ… "信じてくれるなら、いい" 俺を……、助けるために……? 「ま、ってっ!!」 気が付けば鍵を開けて菊池の背中に飛びついていた。
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