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山具健一がそれを見つけたのはひと月ほど前のことだった。
遅く帰ってきたときだった。
道に五歳ぐらいの子供が倒れていた。ただの子供ではない。薄い衣服の背中の穴から翼が生えていた。天使?
ともかく、普通なら警察へ届けるところである。しかしそうしなかった。
人間ではない者だということが人間にバレるとどうなるか、山具健一はよく心得ていた。なぜなら、彼自身も人間ではなかったから。
山具健一は、実家を離れて介護の専門学校に通っている一見普通の青年であるが、実は、レジデンス茜台に引っ越してくる前は九州にいて、寿命千年の山の守り人の一族のひとりだった。それを隠して暮らしていた。
人間には任せておけないと、子供を自宅へ連れて帰った。将来は介護関係の仕事に就きたいと学んでいたということもあって、子供の世話もできるだろうと判断した。
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