はじまり

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「な、な、何で??」 驚きのあまりどもってしまう。 「彼女がいたら告られたりしないでしょ?」 「…なら、そんな偽物のお付き合いなんかじゃなくて、彼女作ればいいじゃない」 さっきから掴まれたままの腕をジッと見つめながら言う。 「ああ…そういうのは面倒なんだよね。…霞、さっきの告白聞いてたんでしょ?」 ドキッとして陸を見上げるとフッと笑われる。 「やっぱ聞いてたんだ?」 「き、聞いてたって言うか…聞こえちゃったって言うか…」 「うん…あの返事はね、本心なんだ」 「…え?」 「俺、好きな子がいる。けどその子と付き合うのは無理なんだ」 「…どうして?」 「その子には彼氏がいて、俺の事なんか眼中に無いから」 うそ… ずっと見ていたのに全然気付かなかった… 「それでも…どうしても好きなんだよね。だからその子以外の子と本気で付き合うとか無理。傷つけちゃうだけだし…わかってもらえた?」 泣き出しそうになるのを何とかこらえてコクッと頷くと陸は言う。 「霞、俺の偽りの恋人になってよ」 それはまるで悪魔の囁き。 その言葉に囚われて私は身動きが取れなくなる。
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