はじまり

8/9
前へ
/113ページ
次へ
「何でそこまでしなくちゃいけないの?沙奈に話さずになんていられないよ…」 沙奈は私の親友で、勿論私の気持ちを知っている。 その沙奈に陸と付き合う事になったなんて言えない。 本当は違うのに… 失恋しちゃったのに… 陸には好きな子がいて、私は偽物なのに… それを親友に黙っていて、それどころか嘘をついて騙そうとしてる。 そんな事、私には出来ない。 「霞、頼むよ。あの二人に信じてもらわなくちゃダメなんだよ…」 はぁ? 意味がわからな…… 待って… 「…まさか、最初からそれが目的だったの?女の子を振る口実じゃなく、あの二人に恋人が出来たって思わせる事が目的?…陸の好きな子って…」 沙奈だったの? 陸は肯定も否定もしなかった。 だけど悲しげに揺れる瞳がそうだよって言ってた。 「霞…頼む…」 「…わかった…偽物って事は誰にも言わない…私たちだけの秘密だよ…」 だからお願い… もうそんな顔しないでよ… そんな、今にも泣き出してしまいそうな顔の陸を見ていたくないよ。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加