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亡くなった祖母が遺してくれた洋館の改装工事が終わったばかりだ。
彼女が前から「見てみたい」と言ってくれていたその家に、今日連れてくることになっていた。
よりによって、あんな話を聞かれた後で。
道中、彼女は不自然に、いつもより少し距離を取って歩いた。
手を伸ばしても届きそうで触れられないその距離がもどかしい。
ヌードモデルなんて話を本気にしているのだろうか。
そんなことはどうでも良いから、いつもの距離で手を繋がせて欲しかった。
「もうすぐですよ」
と声をかけただけで、びくりと肩を震わせる。
ああ、怖がられている。
そんなつもりは毛頭ないのに。
何もかもが『はじめて』なら、人前で肌を晒すなんてとんでもない話だろう。
いつか――そりゃ、もちろん、彼女の気持ちが固まった時に。
彼女の肌を見るのも触れるのも、僕が『はじめて』の男になれればとは、思っているけれど。
最初で最後の男に。
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