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琥珀の光に包まれた彼女こそ綺麗だった。
そう伝えたかった。
けれど、
「――今、この光の中でなら」
振り返って微笑んだ彼女の決心を聞いたら、言葉が出なくなった。
彼女は黙って、羽織っていたカーディガンをするりと肩から落とす。
僕は無意識の内に、ごく、と喉を鳴らした。
彼女の真っ白なブラウスが西日に染まって、それは今まで見てきたどの夕焼けよりも美しく心を揺さぶった。
ちらりとこちらへ視線を寄越してから、彼女はブラウスのボタンに手をかけた。
その動きに迷いはないけれど、さすがに恥ずかしいのか身体の向きを変える。
――綺麗だ。
僕は慌てて画材を広げた。
さっきまでのやましい妄想はどこかに消えていた。
僕はただの絵描きだ。
今目の前にある美しいものを、ただ絵に残したい、それだけだ。
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