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いつの間にか部屋は薄闇に包まれていた。
もうカンバスに乗せた色の識別も出来ない。
これ以上は描けないと気が付いた時、ようやく我に返った。
薄闇の中に浮かび上がる白い背中、緩やかな曲線を描いてくびれていく腰、その下の――……
「す、すみませんっ! 奏さん、寒かったですね。あの、服を……」
声をかけた途端、彼女はその場に崩れ落ちるように座り込んだ。
ぎょっとして駆け寄ろうとして、足が竦む。
ここから一歩でも踏み出したら、画家とモデルの距離ではなくなる――。
「奏さん、大丈夫ですか?」
近付いたら、指一本でも触れたら、理性が崩壊しそうだった。
闇に浮かぶ白い身体はあまりにも艶めかしくて、彼女はあまりにも無防備だ。
「すみません、無理をさせてしまった」
彼女は無言でゆるゆると首を横に振った。
完全に脱力してしまったのか、服を着ようともしない。
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