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声にならない声を発して、彼女は僕の方へ向けていた顔を前に戻した。
「芸術……だと言ったのに」
「僕も一応、絵描きですからね」
逃げて行こうとする彼女の身体を、毛布の上からそっと抱きしめて捕らえる。
――筆を持っている間は。
そう言って、無防備に晒されたうなじにキスを落とした。
唇に冷たい感触……、やはり身体が冷えてしまったか。
贖罪の気持ちを込めて、少しでも熱が伝わるように、時間をかけて唇を這わせる。
腕の中で固まっていた彼女の身体から、徐々に力が抜けていくのが分かった。
「……っ」
彼女が漏らした切ない吐息に、堪らなくなって強く抱き寄せる。
バランスを崩した彼女を足の間に座らせ、背中を身体で受け止めた。
「綺麗でしたよ、とても。この肩も……背中も」
細い彼女の身体にぐるりと前から回した手を、肩口の毛布の隙間から滑り込ませて肌を撫でる。
きめ細かい柔らかな肌にしっとりと吸いつくように指先が馴染んで――、頭の中が、痺れそうだ。
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