最初はそこそこ普通なり

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『楽団ANJO』のCDプロジェクトが本格始動するというこの日、僕は奏さんの案内で森岡夫妻の家へ訪れた。 僕らが着いた時には既に樫本さんは到着していて、受け取ったばかりの曲を早速練習していた。 森岡氏と握手を交わしたのは、奏さんも樫本さんも見ている目の前だった。 彼の言葉が2人に聞かれてはいないかと気を揉んだが、どうやらそんなことはなさそうだ。 2人とも、新曲の楽譜に夢中なのだから。 顔合わせと、CDに収録する3曲のイメージやコンセプトなどを聞かせてもらい、それから実際に曲も聴いて。 ……素晴らしい企画に参加させてもらえることになったのだと、鳥肌が立った。 『代わりにお願いがあるの……あなたに、描いて欲しい絵が』 自分の歌っているところを描いて欲しい、と言っていたはずの樫本さんから、その代わりにと頼まれたことだった。 『CDを出すことになったの。奏も一緒によ。そのジャケットを、出来るならあなたに描いてもらいたい』 奏さんも一緒、という部分がやけに強調されていたように感じたのは、思い過ごしだったろうか。
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