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「晴臣くん、もう描いたのかい」
「え、何をですか?」
「決まっているだろう、奏の絵だよ」
森岡氏が『奏』と彼女を呼び捨てにする度に、表情筋が反応しそうになる。
顔に出せばまた子ども扱いされそうだから、なんとか堪えるが。
「描きましたよ、もちろん。何度も」
当たり前じゃないか。
「そうか」と一言、森岡氏は目を閉じて天を仰いだ。
なんだ、この反応は。
目を開けてこちらへ視線を戻した時の彼の表情に、鳥肌が立った。
もはや紳士の仮面を捨てたエロ親父丸出しのにやつき様だ。
「さぞ美しかっただろう、私の奏の肌は。是非視たい。だが、視ずに想像するのもまた良い」
肌?
何を言ってるんだ、この人は。
いやそれより、
「失礼。『私の』奏、という表現は訂正していただきたい」
腹立たしくて仕方ない。
彼女は誰のものでもない。
強いて言うなら僕の――あ、いや。
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