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「なんだ」
と、残念そうに森岡氏はため息を吐いた。
実に大袈裟な、わざとらしい、小馬鹿にしたような演技がかったため息だ。
「その反応は、『まだ』なんだな」
「何がですか」
強調された『まだ』にカチンと来た。
即座に口から出た「何が」には、苛立ちがそのまま乗ってしまった。
「男が女の絵を描くんだぞ。裸婦に決まってるだろう」
「――な」
なんだ、この男の下品な発想は。
裸婦は確かに芸術だけど、彼の下心丸出しの顔はそうは言ってない。
「冒涜だ。美大では授業の一環として普通にヌードデッサンがありますよ。人物画を描く時に着衣の下の骨格や筋肉を知っていることは重要ですから。大学生ですらあなたみたいないやらしい目で女性の身体を視てなどない。裸婦画はひとつの芸術です。あなたの発想は画家だけでなくモデルにも失礼だ。奏さんに対する侮辱と取りますよ」
まだまだ言ってやりたいことが沢山あった。
なのに、言葉を繋げれば繋げるほど、彼の顔はにやつきを増していく。
「君は奏の裸を、いやらしくない目で見て描けると?」
「当然でしょう! これ以上芸術や彼女を馬鹿に――」
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