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ヒュン…
キィンッ…
緩く剣を構える その人は、口元に厭らしい笑みを浮かべながら私を弄ぶ。
「はぁ…はぁ……」
「どうした、一ノ瀬?
随分と息が上がってるじゃねぇか。
【零番組組長】たる者が情けねぇな。」
楽しそうに弱っていく獲物の姿を見る副長の目はスゥっと細くなる。
あの目は【鬼】というより【獣】に近い気がする。
それにしても……
【零番組組長】か。
そんなモノ…私であって私じゃないんですけどね。
「そうは言われましても…貴方の様に押し迫られれば多少は息が切れますよ。」
「ハッ!俺がテメェに迫るってか?
妙な言い回しは止めやがれ。俺ぁ、男色の気はねぇんだよ。」
心底嫌そうな顔をしながらも、ジャリっと足元の土を踏み鳴らしながら間合いを詰めてくる副長。
その動きに連られる様にジリジリと後ろに下がっていく足。
「私だって、ソッチの趣味は在りませんよ。
……それに、貴方には意中の女子が居る事くらい知ってますし、ね。」
「……いい加減な事言ってんじゃねぇぞ。」
それまで浮かんでいた笑みは一瞬で形(ナリ)を潜めた。
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