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無情に佳乃に襲いかかった痛みは、佳乃の意識を闇に引き摺ろうとしていた。
「…しろ、う……」
微かに呼ぶ声は、まるで怯えた幼子そのもの。
そんな妹の顔と共に目に飛び込んで来たのは……
佳乃に向けて振り上げられた鋭き刃。
「止めろぉぉぉおおぉぉお……ッッ!!」
ザンッ…!
ザシュ…!!
咄嗟に佳乃に覆い被さっていた。
佳乃は……
良かった……
お前は無事だったね。
「ハハハッ……!やはり、君が身を挺して守る、と思ってましたよ?」
酷く冷酷で嘲りを含んだ笑いが耳障りだった。
「貴様か……桂。」
「えぇ、貴方達は……厄介ですからね。」
「……しつこいよ。
私達は高松に戻る気は……ない、のに。」
「……人の心は変わるモノですから。
特に、貴方は全てを知ってますから邪魔なんですよ…高松には。」
やっぱり『高松』なのか…
私達は何も求めてなどいないのに…
……只、静かに暮らしたいだけだった。
私達の業を断ち切る事は出来ないのか?
生まれながらに【鬼】の血脈を持つ者は……
人々の恨みを己が身に浴びて死なねばならないのですか?
お祖父様……
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