抉る三日月

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息をする事ままならなくなってきた身体に… 徐々に凍え感覚のなくなってきた身体に… ほんの一瞬だけ生気が蘇ってくる。 フッ…最期は武士らしく、と言ったところだろうか。 最期の力を振り絞る様に、其の場に座り直し深々と頭を下げる。 「……多大なる恩情、誠に有り難く存じます。」 面を上げれば、振り上げられた刀が二(ふた)振り。 その二本の刀の隙間から覗く三日月は…… 冴え凍る程に蒼く 私の全てを抉り出す爪の様だった。 「……御覚悟……」   ザンッ…ザシュ、ッ…  ドシュッ…ググッ…… この身を貫いたのは刃が爪か…… そんな事は どうでも良い 只、願うのは… この月が満ちるまでには 佳乃の涙が乾いていますよう、に……  ◇◇ 完 ◇◇
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