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《茜の5ヶ月》
地下鉄の伝言板に、返事をピンクにデコってから5カ月が過ぎ。
駅員さんには、
『ダメって言いたいんだけど、すごいもんだねえ』
と感心された会心の出来栄えに、わたしの進路ははっきり決まった。
『芸大に行く』
親にそう宣言して、反対を説得して。
学業だけじゃなくアートの勉強も頑張って。
「やったぁ」
ついに合格通知を手に入れた。
ドキドキしながら、いつものコンビニに行く。
あの日、わたしのデコッた伝言板を見て、騒いでる人の中。
一人だけ瞳を潤ませている男のヒトがいた。
コンビニの彼。
パリッとスーツに、髪もセットしてたけど。
すぐに分かった。
伝言板の彼が、カレだと言う事も。
(失恋だなあ)
そう思っていたら。
わたしに気付いた彼が、近付いて、
『元カノなんだ。今度花嫁になるってさ』
泣き笑いで教えてくれた。
『チョークまみれ』
わたしの手を取ると、
いつものコンビニでロールケーキを買ってくれた。
あれから、5カ月が経つ・・・
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