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《蒼吾・はじめの言葉》
『明日』
そう書いて、オレは続く言葉が見つからなくて手を下ろす。
いつも利用する地下鉄の。
誰からも忘れ去られた、伝言板。
明日---
何があるのだろう。
自分で書いた言葉なのに、
その続きが気になった。
明日なんて、来ないかもしれないのに。
『バイバイ、また明日』
無邪気に言ってた、子供の頃の自分の言葉。
明日も必ずまた会える。
そんな保証なんて無い事は、
大人になるにつれ理解できた。
「はぁ・・・」
大きく溜息をついて、
掲示板から離れる。
地下鉄の階段を上った先の、コンビニで。
簡素な晩メシを買う。
目に入るおでんのコーナー。
いつまで販売しているのか。
『わたし、はんぺんが大好きなの』
そう言って笑った彼女は、もう別の男の花嫁になる。
くそったれ。
世の中ではんぺんが、一番嫌いになった。
適当に弁当を掴んで、煙草の番号を告げて一緒に会計をする。
出てすぐ火を付け、紫煙をくゆらせた。
すれ違う、迷惑そうなオバハンにも苛立って。
「あーあ。なんかイイ事ねえかな」
本音も一緒に吐き出した。
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