3度目の正直

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《茜・夏休み》 「あ・・・」 また売り切れていた。 コンビニのスイーツの棚で、項垂れるわたし。 玉子たっぷりのロールケーキ。 数が少ないのか、食べたい時に手に入らない。 今日で3回目。 「あの・・・」 店員さんに在庫を確認すると、 「ああ・・・今売れたところみたいですね」 レジに目をやる。 会計をしている男のヒトの前に、無造作に置かれたわたしのロールケーキ。 会話が耳に入ったのか、その男の人がチラリとコッチを見た。 遊ばせた黒髪に、部屋着だろうスウェット。 だらけた服装なのに、 (うわーっ。イケメンだ) 急に恥ずかしくなって、店を出る。 出てすぐに、 「あの・・・」 後ろから男の人に声を掛けられた。 客はイケメンとわたししかいない。 店員は女性だけ。 必然的に、さっきのイケメンということになる。 恐る恐る振り返ると、 「コレ」 コンビニの袋を差し出した。 中には、例のロールケーキ。 玉子色の濃い、可愛ゆい黄色。 「・・・煙草だけ買うの、出来なくて」 優しい瞳で、笑ってくれた。
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