第4章 一難去ってまた一難

2/62
622人が本棚に入れています
本棚に追加
/311ページ
薫side クソッ!クソッ!クソッ!! 何であの時、俺は手を離した! 何のために俺はマサの傍にいるんだ! 俺はマサにあんな顔をさせるためにここにいるんじゃない!! ガンッ! 壁を殴った手に血が滲むが、ちっとも痛みを感じない。 こんなの…、マサが受けてきた痛みに比べればっ! 怒りが収まらず、腕を振り上げもう一度壁を殴ろうとしたら、 「ストーップ。それ以上やると痕が残るよ」 腕を掴まれ止められた。 「う…きょう、さん」 「俺様もいるぞー」 「クラさん…」 いつの間にいたのか、全く気付かなかった。こんな情けないところ見られるとか最悪じゃねぇか…。 「すいませんでした…」 きっと何処かで食堂の事を観ていたはずだ。俺が犯した失敗も。余計情けなく感じて項を垂れる。 「話は後、先にその手の手当てをしようか」 そのまま腕を引かれて、いつもの溜まり場にしている教室に連れて行かれた。 中に入るといつものメンバーは居らず、救急箱を引っ張り出してきたクラさんに手当てを受ける。 こんな事言っちゃなんだが、似合わねぇ。 黒髪をオールバックにして制服を来てるから辛うじて学生に見えるが、スーツを着せたらどっかのチンピラにしか見えないだろう。 「オラ、終わったぞ」 「ありがとうございます」 「おう」 包帯の巻かれた手を見て礼を言う。 「ん、じゃあ早速なんだけどさ。薫、マサに何言われたの?観ることは出来ても聴くことは出来ないからさ」 右京さんに聞かれ、食堂に移動した時にマサに伝えてほしいと言われたことを話した。
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!