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薫side
クソッ!クソッ!クソッ!!
何であの時、俺は手を離した!
何のために俺はマサの傍にいるんだ!
俺はマサにあんな顔をさせるためにここにいるんじゃない!!
ガンッ!
壁を殴った手に血が滲むが、ちっとも痛みを感じない。
こんなの…、マサが受けてきた痛みに比べればっ!
怒りが収まらず、腕を振り上げもう一度壁を殴ろうとしたら、
「ストーップ。それ以上やると痕が残るよ」
腕を掴まれ止められた。
「う…きょう、さん」
「俺様もいるぞー」
「クラさん…」
いつの間にいたのか、全く気付かなかった。こんな情けないところ見られるとか最悪じゃねぇか…。
「すいませんでした…」
きっと何処かで食堂の事を観ていたはずだ。俺が犯した失敗も。余計情けなく感じて項を垂れる。
「話は後、先にその手の手当てをしようか」
そのまま腕を引かれて、いつもの溜まり場にしている教室に連れて行かれた。
中に入るといつものメンバーは居らず、救急箱を引っ張り出してきたクラさんに手当てを受ける。
こんな事言っちゃなんだが、似合わねぇ。
黒髪をオールバックにして制服を来てるから辛うじて学生に見えるが、スーツを着せたらどっかのチンピラにしか見えないだろう。
「オラ、終わったぞ」
「ありがとうございます」
「おう」
包帯の巻かれた手を見て礼を言う。
「ん、じゃあ早速なんだけどさ。薫、マサに何言われたの?観ることは出来ても聴くことは出来ないからさ」
右京さんに聞かれ、食堂に移動した時にマサに伝えてほしいと言われたことを話した。
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