第1章

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私、広田菜摘(29歳)はネクストテクノロジーカンパニーでシステムエンジニアとして働いている。 職場では「鬼の広田」と呼ばれ、チーフと言う役目も勤めている。 今まで私は仕事街道まっしぐらでやって来た。 なのに最近ちらつくあいつの顔。 後輩の伊藤駿介の存在にどうしても目が行ってしまう…。 「ありがとう」 私は肩をこりこりしながら駿介が持って来てくれたコーヒーを一口飲む。 「肩もみましょうか?」 私は「うんうん」とお願いする。 「駿介」は新入社員プレゼン研修の教え子で、出来の悪い証しに「駿介~!」と激を飛ばしたのが呼び名の始め。 だがこの「駿介」異常なモテモテぶり。 毎日の様に誰かが告白しては撃沈している、と親友の中田優が話してくれた。 「あ~気持ちいい~ありがとう」 「仕事のやり過ぎですよ。男並みの仕事量じゃないですか。もう少し周りにやらせたらどうです?」 私だって周りにやらせたい。 でも出来ない…。何故なら私をご指名でくる仕事が多いから…。 「私の仕事はそんなに甘くないのよね。誰かさんの色恋とは違って~」 駿介はムッとしている。 「俺は好きでこうしてる訳じゃないですよ。仕事はちゃんとこなしてますから」 「あっそ。毎日のお茶当番も決まってるじゃない」 「向こうが勝手に決めてるだけです。俺は全然興味はないですから」 「良く言うわよ。先日まで総務課の可愛い子と付き合ってたくせに」 「へぇ~意外と知ってるんですね。俺の事」 駿介のちゃかした言い方に私もムッとした。 「噂はどこからでも耳に入るものよ。嫌でも聞いちゃう」 「先輩、もしかして俺の事気になってるんじゃないですか?」 ドキッ!!意表を突かれた。 確かに気になるのは間違いないんだけどな…。 でも私はこんな歳だし、あんな若い子たちみたいに甘える事も苦手だし…。今更駿介と私の立場を崩す訳にはいかない気がして…。 →
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