第1章

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どうして誰も突っ込まないんだろう。 絶対おかしいはずなのに。 まさか、みんなには見えていないのか? 俺は、おそるおそる先ほどの横道を見つめる。 ここからは、死角になっていて何も見えない。 「なぁ」 自分の目がおかしくない。 そう確認したくて、隣にいた愁(シュウ)の制服の袖を引く。 「何だよ」 愁は、面倒そうに俺の顔を見た。 「変なもの、見なかったか?」 「変なものって、何だよ」 いや、変なんだ。 絶対おかしいんだ。 だけど、どうやって説明したらいいのかわからなくて、言葉に詰まる。 見たほうが早いだろう。 「ちょっと、こっち」 もと来た道を、戻る俺。 不審な表情を崩さないまま、愁は俺の後を黙ってついてきた。 そして、先ほどの横道の前までやってきた。 よしっ。 俺は自分に気合を入れて、小路に足を踏み入れた。
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