第1章

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「あれっ?」 ない。 確かに見たはずのモノは、そこから消えていた。 「何だよ?」 俺の横から覗き込む愁。 「何もないじゃないか」 呆れたように、俺の顔を見る。 「お前、眼鏡かけた方がいいんじゃね?」 いやいやいや。 俺の自慢の視力は、1.5。 眼鏡なんて、かけらほども必要としないから。 まぁ、伊達眼鏡くらいなら。 帽子もかぶって、ちょっとした変装? そこまで考えて、がっくりと肩を落とす。 変装するまでもなく、俺は目立たない存在だから。 たぶん、クラスの中で、俺の名前をフルネームで言えるやつなんて、幼馴染の愁くらいだから。 「で、何だったんだよ?」 日に透けて、きらきらまぶしく光る愁の髪。 涼しげな切れ長の瞳が、俺を見据える。 こいつが女にもてるのも、わかる気がするよ。 幼馴染じゃなかったら、きっと俺なんかの隣にいないやつだな・・・
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