10人が本棚に入れています
本棚に追加
「あれっ?」
ない。
確かに見たはずのモノは、そこから消えていた。
「何だよ?」
俺の横から覗き込む愁。
「何もないじゃないか」
呆れたように、俺の顔を見る。
「お前、眼鏡かけた方がいいんじゃね?」
いやいやいや。
俺の自慢の視力は、1.5。
眼鏡なんて、かけらほども必要としないから。
まぁ、伊達眼鏡くらいなら。
帽子もかぶって、ちょっとした変装?
そこまで考えて、がっくりと肩を落とす。
変装するまでもなく、俺は目立たない存在だから。
たぶん、クラスの中で、俺の名前をフルネームで言えるやつなんて、幼馴染の愁くらいだから。
「で、何だったんだよ?」
日に透けて、きらきらまぶしく光る愁の髪。
涼しげな切れ長の瞳が、俺を見据える。
こいつが女にもてるのも、わかる気がするよ。
幼馴染じゃなかったら、きっと俺なんかの隣にいないやつだな・・・
最初のコメントを投稿しよう!