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「いや、気のせいだった」
「変なやつ。まぁ、今に始まったことじゃないか」
帰るぞ、そう言って、先に小路から出ていく。
俺はなんだか気になって、もう一度後ろを振り返る。
「ちょっと、あれあれっ!」
慌てて先に出た愁を引き戻した。
「何だよ?」
不快そうに眉をひそめながらも、戻ってくる愁。
「ほら!あれだよ!」
そして俺の指差す先には・・・・
何もなかった。
ん?
首をかしげた俺。
それを冷たく見つめる愁。
「やっぱり、眼鏡買え!」
からかわれていると勘違いした愁は、俺を置いて、ずんずん先へと行ってしまった。
おっかしいな?
確かにあったのに。
ほんとに幻覚でも見たのかな。
腕でごしごしと目をこすると、もう一度小路を見渡す。
風が吹いて、片隅に落ちていた葉っぱをさらっていくだけだった。
やっぱり、目がおかしくなったのかもしれない。
昨日ゲームしすぎたかな。
「おーい。待ってくれ!」
小さくなっていく愁の背中を、俺は慌てて追いかけた。
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