第1章

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「いや、気のせいだった」 「変なやつ。まぁ、今に始まったことじゃないか」 帰るぞ、そう言って、先に小路から出ていく。 俺はなんだか気になって、もう一度後ろを振り返る。 「ちょっと、あれあれっ!」 慌てて先に出た愁を引き戻した。 「何だよ?」 不快そうに眉をひそめながらも、戻ってくる愁。 「ほら!あれだよ!」 そして俺の指差す先には・・・・ 何もなかった。 ん? 首をかしげた俺。 それを冷たく見つめる愁。 「やっぱり、眼鏡買え!」 からかわれていると勘違いした愁は、俺を置いて、ずんずん先へと行ってしまった。 おっかしいな? 確かにあったのに。 ほんとに幻覚でも見たのかな。 腕でごしごしと目をこすると、もう一度小路を見渡す。 風が吹いて、片隅に落ちていた葉っぱをさらっていくだけだった。 やっぱり、目がおかしくなったのかもしれない。 昨日ゲームしすぎたかな。 「おーい。待ってくれ!」 小さくなっていく愁の背中を、俺は慌てて追いかけた。
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