レールからの脱却

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夏月がコーヒーの入ったマグを置いて腕を組んだ。 「で、具体的にどういう店にするの?」 「まだ決めたばかりではっきりとはしてないけど、カフェにしたいんだ」 ずっと頭の中に描いていたのは、誰でも気軽に寄れる、家のリビングみたいな温かい店。 「カフェって言ってもかしこまったすごくお洒落な感じじゃなくて、家のリビングみたいな。くつろげる空間にしたいっていうか。食事も家庭料理メインでちゃんと出したいし」 「カフェか。そっちのほうがあの界隈は姉貴みたいな個人経営の飲み屋が多いからライバル少なさそうだけど、逆に需要があるかどうかだな。でもお前、経営のノウハウとか大丈夫?」 「う……お姉ちゃんに教わっていくつもりだけど」 「姉貴もいろいろ忙しくなるから、できるだけのことは今のうち吸収しろよ。あと、身内だからって甘えるな」 「わかってるよ」 夏月の言葉に顔を引き締める。 やると決めたからには遊びじゃない。 身内に頼ってばかりでは先が持たないし、私が自分で自分の居場所を作らないといけない。
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