レールからの脱却

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「仕事は?」 「三月で辞める。ちょうど契約切れるけど、それまではお金はできる限り溜めておかないと」 「忙しくなるな」 「うん」 それから夏月のことも話を聞いた。 アメリカに行って、向こうでツアーコンダクターの仕事をしている友人の手伝いをするらしい。 夏月自身、英語教師で留学経験もあるから向こうの生活はあまり不安ではないみたいだったけど。 どうしてか、その横顔が少し寂しそうに見えた。 それが何なのか、その時の私にはわからなくて、でも訊くのは躊躇われて。 微妙にしんみりとした空気を誤魔化すようにカフェオレのおかわりを強請ると「寝られなくなるぞ」って苦笑いされた。 静かな夜。 肩を並べて二人で将来のことを話し合うなんてお腹の中からずっと一緒にいたのに初めてだった。 こうして、私と夏月の短い二人暮らしが始まった。
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