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「和香菜とお前はちょっと似てる」
けんちゃんまでもが私が考えていたようなことを言い出すから少し驚いた。
「そ、そう?」
「ああ、なんていうかちっこくて、ちょろちょろしてて、危なっかしいところ」
な、なんじゃそりゃ。
まるっきり子供扱い。
無意識に頬が膨らむ。
「失礼ね。私、危なっかしくないわ」
「そうだな。お前はいい女だ」
ハンドルに肘をついて私を見つめながら言うけんちゃん。
その顔はもう余裕げな笑みが浮かんでいて、でも暗い車内だからかいつもと違う人に見える。
精悍な顔に陰影ができて、とても色っぽい。
『いい女』発言に加え妖艶な雰囲気に気圧されて、私は頬が熱くなるのを感じながらおどおどとけんちゃんを直視できずに視線を泳がした。
「い、今頃気づいても遅いわ!」
「だな。逃がした魚はでかかったかもな」
動揺を悟られたくなくて強がりを返すと、けんちゃんに腕を引かれた。
私の身体は突然のことで引かれるがまま、けんちゃんのほうへと倒れていって。
頬が彼の黒のダウンコートについた時、ぎゅっと抱き締められた。
二本の男らしい腕が私の背をしっかりと包み込む。
私は何が起こったのかわからなくて、ただ息を詰めて彼の体温に包まれていた。
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