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冷蔵庫に入れておいたヨーグルトと混ぜてみると、真琴さんはゆっくりそれを口に運んだ。
「おいしい」
「よかった」
少しずつだけど、これなら胃に入るらしくて真琴さんは嬉しそうに微笑んだ。
美しい顔立ちに白い肌。
元々そうだったけど、今は白いというより青みがさして血の気がなく、まるで人形のようだ。
浮世離れしているというのか、現実味がない、ぞくっとするような美しさ。
でも、目が離せない。
妊婦さんってこんな感じなの?
私の周りではまだ妊娠した友達がいないからわからない。
その横顔に目を奪われていると、真琴さんがゆっくりとスプーンを置いた。
「……こんなので結婚式大丈夫かな」
「その頃にはつわりも治まってるかもしれないよ」
真琴さんから漏れた弱音に私は根拠ない言葉で励ますしかできない。
真琴さんは悔しそうにまた唇を噛んだ。
「春奈さんのお祝いもちゃんと言えてないし、彩夏さんのお店のお祝いもしたいのに」
「そんなのいいよ。お姉ちゃんも向こうの家に行ったりして忙しそうだから。あ、でも今度三人で出かけようよ。気分転換にもなるだろうしさ」
家に居続けて気が滅入っているのならどこか近くでも可能なら出掛けてもいいだろう。
つわりがひどいなら開店前の『さくら』でお姉ちゃんと三人で話すだけでもいいかもと思って気軽に提案した。
でも、真琴さんはビクッとその身を震わせて、瞳を左右に揺らす。
私はその反応を訝しく思い、『どうしたの?』と問いかけようとした。
だけど、真琴さんが先に笑顔を張りつけるのが早かった。
「うん。雪弥さんに訊いてみるね」
ぎこちない笑顔。
明らかに何か隠している様子に眉を顰めた時、リビングのドアが開いた。
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