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何だろう。
すごく、もやもやする。
言いようのない不安な気持ちを抱えて帰宅すると、夏月が既に帰っていた。
部屋着に着替えてテレビを見て寛いでいたところを私へと顔を向ける。
「おかえり」
「ただいま」
「腹減った」
「ごめん。すぐ用意するから」
食事はできるかぎり私が作るようにしている。
居候という身分もあるけど、お店に出すメニューの試食を夏月に頼んでいるからだ。
私は手を洗ってエプロンをつけると晩御飯の支度にとりかかった。
大体は仕込みをしておいたからあとは仕上げをするだけだ。
ワンプレートに総菜とご飯を盛り付けて、夏月に出す。
「見た目はいいんじゃない?」
三つ仕切りがついた温かみのある木製のお皿にそれぞれサラダとバターライス、トマトソースをかけたチキンのソテーの色身が映えて食欲をそそるように置いたから褒められると嬉しい。
夏月は両手を合わせて「いただきます」と言うと、フォークを手に取った。
「どう?」
「まだ食ってねぇし」
気が逸る私に夏月の苦笑が漏れる。
夏月はサラダを食べた後、チキンのソテーにフォークを立てて次々口の中に運んでいく。
お腹が減っていたのもあってか、あっという間に皿は空になった。
「うまいけど、量的に男にはちょっと物足りないかもなぁ。まぁ見た目は綺麗でいいけど、もう少しボリュームあるほうがお得感というかもっと映えると思う。酒出さないなら余計に飯がメインなわけだし」
「ごちそうさま」の後に言った夏月の感想に私は頷いた。
夏月は過去にバーで働いていたこともあって、的確に駄目なところを突いてくる。
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