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翌朝、シャワーの音で目が覚めた。
ベッドから起き上がると床に敷いた布団はもぬけの殻。
昨日、精神的に弱った夏月を何とか寝かせて、夜中だしお姉ちゃんにメールだけ打った。
すると、真琴さんの容体は心配いらないこと、朱里さんのところにしばらく身を寄せることになった内容が送られてきた。
お兄ちゃんとどうなるんだろう。
ここまで事態が大きくなったのなら、別れるという可能性もある。
あれだけ愛し合っていたのに、どうして。
私がその一石を投じてしまったかのようで胸に罪悪感がひしめく。
でも、あのまま真琴さんが我慢し続けていればどうなっていたのかと考えると、なるべくしてなったような気もしてきて。
結局、それは私が罪悪感から逃げるための言い訳でしかなくて、余計に自己嫌悪に陥った。
そう考えながらも隣の夏月を気にかけていたんだけど、疲労でいつの間にか眠っていたみたい。
私がベッドから起き上がったところでバスルームのドアが開く。
中からジャージ姿の夏月が濡れた髪をタオルで拭きながら出てきた。
その顔にはやはり傷ができていて、昨日のことが現実なんだと今更ながらもう一度実感。
傷の痛々しさと昨日の夏月の様子を思い出して、直視できずに夏月の顔から目を逸らした。
「おはよ」
「うん……」
「顔の傷さー、どうにか隠せないかな?さすがに受験シーズンで生徒が少ないとはいえ、学校でこの顔はやばい」
悄然とする私に対して当事者の夏月は全くいつもどおり。
暢気な口調で赤く腫れた口の端を自分で触って、「いってー」と痛みに顔を顰めた。
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