ジェミニの恋

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努めて明るく振る舞う片割れに、私が気落ちしているのも余計に気を遣わせてしまいそうで何とか笑顔を張りつける。 「ファンデーションとか?あーでも、目の周りの青痣は隠せるかもだけど、口の傷、まだ塞がってないから無理でしょ」 「だよなぁ。ここは絆創膏しかないよな」 「ぷっ、なんかマンガみたい。不良がケンカした後みたいな」 「あのなー、教師にその表現はどうよ。あ、そうだ!」 「何?」 「マスクだよ!風邪引いて受験シーズンに生徒に移したらまずいからって言ったら……いや、英語のリーディングの時、さすがにマスクしながらじゃまずいか。あー、もうやっぱ絆創膏しかないじゃんよ。かっこわりぃ」 「今日は休みだけど、明日からの誤魔化す理由考えないとな」と嘆く夏月。 でも、すぐにふっと笑って 「まぁ兄貴も同じ顔で会社行かないといけないし我慢だな」 と呟いた。 その顔が晴々としていて、昨日の弱弱しい面影もなくてほっと安堵する。 だから、いつ伝えるか迷っていたことをここで言うことにした。 「真琴さんも赤ちゃんも大丈夫だって。しばらく朱里さんの家にいるって」 「そっか。わかった。サンキュ」 夏月は怪我をこさえた顔でニッと笑って、「さぁ朝飯にしよ」と言った。
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