ジェミニの恋

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「お前が小さいのは俺のせいだとずっと思ってきた」 夏月はお茶碗を置くと真剣な顔でそう言った。 「俺がおふくろの腹の中でお前に行く栄養まで吸収したからお前は小さくて弱い身体で生まれてきたんだって。幼い頃から心のどこかで罪悪感があったんだ」 「だから寂しくてもある程度我慢してきた」と夏月が言った時、私はやっぱりなと思った。 ずっと気づいていた。 私が体調を崩すたび、家族は私に構って夏月を放置していたから。 寂しがる双子の片割れに私は気づいていながらも、何もしなかった。 むしろ夏月は健康なんだからとそうであることが当たり前のように感じていた。 「でも、もうお前は一人で立って生きていける。その力があるだろ?俺はお前を見くびってたんだな」 夏月は息を吐くとともに笑った。 それからゆっくり私の頭に手を置いて撫でた。 「ここまできたらもうあと少しだから、頑張れよ」 こういう時に急に兄らしくなるのは反則だ。 私は落涙の予兆で瞼が熱くなるのを感じながらも、しっかりと頷いた。 「うん、頑張る」 「じゃあ、おふくろたちによろしく」 夏月は満足そうに微笑むと、私から手を退けて再び箸を持って朝ごはんを口の中に放り込んだ。
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