ジェミニの恋

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その日の夜。 お姉ちゃんに店に遅れる断りを入れて、私は仕事終わり実家へと向かった。 数週間ぶりの帰宅。 まだそんなに時間は経っていないのに、大ゲンカして飛び出した時から随分時が流れたように思える。 私はドキドキと緊張しながらインターフォンを鳴らした。 インターフォンには母が出た。 私だとわかると「入ってらっしゃい」とだけ言って通話が切られた。 声音からは何の感情も読み取れなくて、さらに緊張が増す。 でも、避けては通れない道だ。 私がやろうとしていること、今まで育ててくれた両親にも理解してもらいたい。 覚悟を決めて門扉を開くと、玄関へと歩いた。 家に入ると、玄関に母が立っていた。 「お父さん、リビングで待ってるから」 無表情にそう言い放つと、さっさと歩き出す。 私は靴を脱ぐと母の後に続いた。 リビングに行くと、父が腕を組んでソファに座っていた。 寡黙で、厳格な父。 その眉間にはくっきり皺が刻まれているからさらに威圧感が半端なく滲み出ている。 母は父の隣に腰を下ろしたから、私は怖ず怖ずとその前のソファに座る。 二人を前にして声が震えてしまいそうになるけど、私はぐっと膝の上で拳を握った。 『でも、もうお前は一人で立って生きていける。その力があるだろ?』 夏月の言葉が魔法にみたいに勇気をくれた。 「私、お店したい。だからお見合いもしないし、仕事も辞めます」 毅然とした声と態度で、沈黙を破った。 でも、二人は微動だにしない。 ただ私をじっと見据えてくるから、思わずたじろいでしまいそうになるけど、ここで負けたら終わりだ。 私の覚悟はそんなものではない。 「勝手なこと言ってるけど、もう決めたの」 そう言って「お願いします」と頭を下げた。
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