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そして、私はその日から夏月のところではなく実家に帰った。
短い夏月との共同生活。
でも、今までで一番夏月のことを知れた時間。
夏月、一人で大丈夫かな。
強がっているけど、きっと真琴さんのことでまだ責任感じているはずだ。
そのことを考えながら窓の外を見ると、ちらちらと舞う白い粒。
「雪だ」
思わず窓辺に近寄ると、白い粉雪は瞬く間に増えて視界を白に変えていく。
お兄ちゃんたちの結婚式の前夜。
深々と静かに降る雪。
その雪は朝には止んだけど、東京を真っ白に染め上げた。
「真琴さん、綺麗」
「ありがとう」
ウェディングドレスに身を包んだ真琴さんは私の言葉に照れながらも笑みを浮かべる。
白いエンパイアドレス。
それは真琴さん用にセミオーダーされたもので、お腹のラインが出ないから正直、妊婦に見えない。
決して豪奢じゃなくてシンプルなデザインだけど、総レースのドレスは背中側の切り替えの部分に白いバラのコサージュがついているのが品がありつつ可愛くて、真琴さんにとても似合っている。
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