2881人が本棚に入れています
本棚に追加
/230ページ
真琴さんのご両親も真琴さんのウェディングドレス姿を見て涙ぐみながらもすごく嬉しそう。
うちの母親とお姉ちゃんが真琴さんの花嫁姿を褒めちぎるものだから、真琴さんはちょっと困ってたけど。
「でも、雪やんでよかったわね」
「ええ」
私の母が窓の外を見るのにつられて私もそちらに目を向ける。
空は雲のない青空。
だけど、気温が低いからか昨日降った雪はまだ解けずに式場の庭を真っ白に染めている。
ただのオブジェなのか冬の間だから止まっているのか、庭にある噴水も雪が積もってそのモニュメントの原型がわからない。
だけど、普段は綺麗に整備された庭らしくて、温かい季節は外でガーデンウェディングもできるそうだ。
「夏月も病気なんて。大丈夫かしら。見舞いに行こうにも移るといけないから来なくていいの一点張りで」
母が心配する傍らで真琴さんの顔も曇る。
お兄ちゃんの元に帰ってきた真琴さんに初めて会いに行った時、私は真っ先に彼女に訊いた。
「真琴さん、……いいの?」
お兄ちゃんとやり直す道を選んで。
お兄ちゃんの幸せはもちろん望んでいる。
だけど、真琴さんにも幸せであってほしいというのが私の大前提だ。
お兄ちゃんとの間にどれだけの溝があって、ああいう事態が起こってしまったのかはわからないけど、これから先また同じようなことが起きないとも限らない。
だけど、真琴さんはすぐ「うん」と頷いた。
「だって雪弥さん、私がいないと駄目だし」
実にあっさりと、吹っ切れた様子で話すものだから、私は身を乗り出してさらに訊いた。
「ほ、本当に?」
「うん、私も雪弥さんじゃないと駄目だから。だから、これでいいの」
特に無理をしている様子はない。
本心からそう思っているようだ。
でも、真琴さんの表情が次の瞬間、暗く影を落とす。
「夏月くんは……どうしてる?」
迷いながらも私に尋ねてくる。
夏月は真琴さんと会うことを拒否していた。
『怪我が治るまでは会えば気にするから』って、夏月が真琴さんの連絡に応じていない。
最初のコメントを投稿しよう!