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「元気に学校行ってるよ。もうすぐ卒業式だから色々準備で忙しいみたい」
「そっか」
私の言葉に真琴さんは薄く微笑んだ。
その俯きがちの顔が寂しそうで、真琴さんの夏月に会いたいという気持ちが伝わってくる。
でも、夏月自身から自分のことはあまり話すなと言われていたから、その時は話を適当にはぐらかすことしかできなかった。
真琴さんの控室を出て親族の控室へみんなで向かう。
その廊下で私は悶々と考え込んでいた。
本当に来ないつもり?
夏月はあと一ヵ月でアメリカに行ってしまう。
次はいつ真琴さんと会えるかわからない。
二人だけで言葉を交わすことももうあまりないのかもしれない。
私なら……。
最後に、遠くからでも姿が見たい。
きっと、夏月もそうだ。
何の根拠もない。
ただ私の片割れも何となくそうじゃないかと思った。
みんなが控室に入っていく中で、廊下の向こうから現れた人物に私は「あ」と声を上げる。
「緒方さん!」
「あ、彩夏ちゃん」
爽やかに私に笑顔を向けてくる緒方さん。
いいところに!
私は嬉々として彼に駆け寄った。
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