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泣きそうで、でもそれを堪えて浮かべた笑みだった。
でも、すぐ顔を引き締めると私を追い越して部屋に近づいていく夏月。
私は夏月の後ろ姿を見送った後、すぐに踵を返した。
ここで私が陰に隠れて見ていたら『二人っきり』にならない。
私ができることはここまでだ。
あとはお兄ちゃんを引き留めてくれているであろう緒方さんの手助けをしないと。
雪の上についた二人分の足跡の上を踏み締めて戻る。
......双子揃って叶わない相手を好きになるなんてね。
私たちはどこまでも正反対の性格だったけど、どこまでも似ている存在だった。
皮肉な運命にふっと笑って天を仰ぐ。
視界に映った空は厭味なくらい真っ青で、あれだけ雪を降らせたくせにもう春の訪れを予感させていた。
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