2881人が本棚に入れています
本棚に追加
/230ページ
そして、ヒナ先生の授業も例のごとく森くんは友達と大きな声でしゃべっていた。
森くん自身、身体が大きくて、少しスレた怖い雰囲気だったから他のクラスメイトも何も言わずに我慢するばかりで。
その時、黒板に板書していたヒナ先生が中途半端なところでチョークを下ろした。
「おい、森。授業を受ける気がないなら教室から出ろ」
ヒナ先生が黒板から振り返って発した言葉に教室がしんと静まった。
森くんもまさかヒナ先生から言われるとは予想していなかったみたいで、虚を突かれた顔で固まっている。
それくらい、普段のヒナ先生は温和で多少クラスが騒がしい時に「はいはい、静かにしろ」って軽く諌める程度だったから。
「別にお前が授業を放棄するなら、そうしろ。ここで何をするかは自己責任だからな。だけど、ここはお前の学校じゃない。みんな平等に生活をする場所だ。他人に迷惑をかけるなら出て行け」
森くんを睨み据えたヒナ先生はすごく怖くて、いつもの優しい面影はなくなっていた。
森くんはカッと顔を赤らめると、席から立ち上がって出ていってしまった。
その後をヒナ先生は追いかけることもせずに平然と授業の続きをしていたのだけど、私は内心ヒヤヒヤしていた。
だって、他の先生が避けていたことをヒナ先生がやってしまったから。
もしかしたら、あとでPTA会長の森くんの父親にヒナ先生がひどい仕打ちをされるんじゃないかって。
そう思ってしまって、正直ヒナ先生の授業なのに全然頭に入ってこなかった。
最初のコメントを投稿しよう!