卒業

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後日、森くんがヒナ先生の授業をボイコットしようとクラス全員に持ちかけたけど、誰も乗らなかった。 「やるならてめぇだけでしろよ。他人を巻きこむな。親の陰に隠れてクソかっこわりぃ」 そうクラスメイトの川崎くんが言って、森くんと掴みあいになった。 バレー部だけど私とそう身長が変わらない川崎くんとスポーツをしているわけじゃないのに無駄にでかい森くん。 そのデコボコ二人が胸ぐらを掴み合ったところに授業をしにヒナ先生が現れた。 一目で事態を飲み込んだ先生がすぐ止めに入ったから大きなケンカにはならなかったけど、隣のクラスまでケンカの声が響いて他の先生も来てしまって大事になった。 放課後二人とも親呼び出しになって、PTA会長の森くんの父親が出て来て。 ついにヒナ先生が危ない!って思って部屋の外で聞き耳を立てていたクラスメイトとヒナ先生に非がないことを伝えようと生徒指導室のドアを開けて雪崩れ込んだ。 でも、森くんが父親に叩かれて、頭を下げさせられていたからびっくり。 父親はいたって真面目な人で権力でヒナ先生をどうにかしようとする人ではなかったみたい。 最終的にケンカをしたことは未遂ということで今回は二人ともお咎めなしになった。 ヒナ先生は「よかった」と二人が罰せられなかったことに安堵していたけど、 私からしてみれば自分のことを心配してほしい。 だって、これが陰湿な保護者だったら、ヒナ先生にきっとクレームをつけて問題にされているところだ。 ヒナ先生って意外と肝が据わっているというか自分を省みないというか。 もしかしたら......キレたらすごく怖いのかもしれない。 でも、そこからどうしたのか、ヒナ先生はいつの間にか森くんとも仲良くなって。 英語でわからないところを放課後教えていたりしていた。 全然、私が気を揉むことでもなかったみたいで肩透かしを食らった気分だったけど、ヒナ先生がまた笑って教壇に立てることが何より喜ばしかった。
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