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「俺が辞めるって学校に広まった時、お前俺の授業で泣いただろ?」
過去を回想していたら、隣でもそうだったらしくヒナ先生が二カ月前のことを言いだした。
私はバレー部のマネージャーだったから、先生が三月でやめることを他の生徒より先に年末の最後の練習で聞いていた。
その時は何の冗談かと思って、全然信じられなくて。
それは周りの部員たちも同じで、みんな口々に「嘘だろ」ってヒナ先生に訊くけど、ヒナ先生は緩く首を振った。
ヒナ先生がいなくなる。
高二の私はそろそろ卒業を意識する時期だから、ヒナ先生と別れが来ることを嫌だって思って考えないようにしていたのに、まさか先にヒナ先生がいなくなるなんて。
目を背けたくなる現実に頭は考えることを拒否して、その日はどうやって家まで帰ってきたかも曖昧だった。
それから年が開けて学校が始まった時には、その話は学校に広まっていてみんながいろいろと噂をしていた。
どこかの令嬢と結婚して逆玉だから辞めるとか。
女子生徒と恋仲になって辞めさせられるとか。
根も葉もないくだらない話。
先生は自分をリセットするために一度仕事を辞めて遠くにいくだけ。
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