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「悔しい」
私に向けることのない大人の顔で想い人を思い出すヒナ先生も。
先生にそんな顔をさせるあの女性も。
正直な感想が口から零れた。
先生は小さい子供の駄々に困ったかのように薄く微笑んで「ごめんな」と言うから、余計に悔しい。
だけど、負けない。
「悔しいけど、でも、私、いずれ先生を卒業させてみせます。その人から」
「月島」
宣言する私を先生の瞳が映す。
いつか、この瞳に映るのが私だけでありますように。
そう願いをかけて先生にニカッと笑う。
「その時は私、超いい女になってますんで!必死になって口説くことになりますよ!覚悟していてくださいね!」
ニシシと両頬を上げての宣戦布告に先生は驚いて目を丸々と見開く。
だけど、すぐにクスリと笑みを漏らして
「それは楽しみだな」
私の大好きな日溜まりのような笑顔でそう返してくれた。
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