2881人が本棚に入れています
本棚に追加
/230ページ
って、息巻いていたくせにあの様だもんなぁ。
あの時のことを思い出して、大きく嘆息をして座席の背もたれに凭れかかった。
姉貴に無理に彼女の結婚式場への付き添いを代わってもらって、久しぶりに真琴さんとゆっくり話をしたのはよかったんだけど、そこに兄貴が一日早く帰ってきたものだから事態は一変。
真琴さんの異常なまでの動揺っぷりからして兄貴に何を言っても無駄だと悟った俺は喧嘩覚悟で全部思っていることをぶちまけた。
結果殴り合いになって、それで真琴さんが倒れてしまって。
兄貴が咄嗟に抱きとめたけど、俺は情けなくもその場に立ちすくむだけで。
結局、俺のしたことは何一つ彼女のためにはならなかった。
感傷に浸りながら見ていた日本の地も雲の中に入ってもう見えない。
本当は連れていきたかったんだ。
彼女の幸せを願う裏で、夕日を見た日も、結婚式の日も。
身籠っていようが何だろうが、抱き締めて連れ去ってしまいたかった。
それができないのは俺の意気地のなさと兄貴への後ろめたさと、決定的に彼女の気持ちが俺にはなくて。
強引にでも連れ去る度胸がなかった。
そんな俺が偉そうに彼女を救いだすなんてできるわけなかった。
彼女は俺のおかげだって言ってくれたけど、いまいち信じられない。
最初のコメントを投稿しよう!