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でも、真琴さんはその後言った。
「大丈夫」と。
白いドレスに身を包んだ彼女は今までで見た中で一番綺麗で。
少し不安の残る表情だったけど、ちゃんと覚悟を決めて笑っていた。
強いわけじゃないのに、我慢して生きてきた彼女。
同士のように思っていた彼女がそう決心した。
俺はそれは信じることにした。
どうしても駄目な時、ちゃんと迎えに行くなんて見栄張ったけど、できればそうならないように祈るだけだ。
俺は彼女といたいけど。
きっと、真琴さんが泣くことになるのだから。
それは見たくない。
「はぁ……」
だめだ。
彼女のことを考えだすと無性に胸が苦しくなる。
これから十時間とあるフライト。
ずっと悶々考えていては気が休まらない。
何かで紛らわそうと機内の退屈しのぎとしてもらった紙袋の中身を物色することにした。
ファッション雑誌にマンガ。
えらく小難しい政治本はきっと親父の餞別だろう。
あとはガムとか飴とかのお菓子類。
その中に混じっていた細長の長方形を目にした時、俺は漁っていた手を止めた。
「これ……」
その箱を手に取って紙袋から出す。
玩具つきのチョコレート菓子。
所謂、食玩というやつ。
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