2881人が本棚に入れています
本棚に追加
/230ページ
結局、兄貴は俺の罪を責めないままだ。
真琴さんが倒れた後だったからそれどころじゃなかったんだろうけど、あれから特に兄貴から責められることもなく、俺からもう一度赦しを請うこともしないまま日本を発ってしまった。
それがまた兄貴の器のでかさのようで、俺がまだまだ青臭いガキのままだってことを物語っている。
手に持っていた菓子箱を開けて、中身を取り出した。
箱を開けて出てきた赤のヒーロー。
結局、俺が何回買っても出てこなかったやつを引き当てるなんて。
最後まで嫌味なくらいかっこよすぎだろ。
「……ったく、兄貴め」
間違いなく俺のヒーローは兄貴だった。
どんな戦隊ヒーローより、どんな最強勇者より。
兄貴は一番強くて、優しい俺のヒーローだったんだ。
涙が滲んでくる目を擦る。
思わぬところで泣いてしまった。
まだ、俺は何も成せていなくて、これからだっていうのに。
俺は全く兄貴の足元に及ばないけど。
せめて、次会った時くらい『お前、なかなかやるな』って兄貴に言わせられるくらいになりたい。
いつまでもお菓子を強請っていた子供のままじゃないって言ってやる。
また兄貴を目標としている時点で俺の根本は変わらないみたいだけど、それがやっぱり俺の目指す場所のようで。
俺は目元を強く擦って涙を消すと、手の中の小さなヒーローに笑みを溢した。
最初のコメントを投稿しよう!