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「おい、聞いてるのか?」
二ヶ月前のことを回想している前で朝比奈が不機嫌な顔で言う。
説教が長いからついつい違うことを考えてしまうのだけど、それをすると朝比奈がまた怒って説教をするというループ。
それに陥りそうな予感がして僕は朝比奈が話し出す前に言葉を挟んだ。
「で、朝比奈の心配事って何?わざわざ呼び止めてさ」
昼休みに社食に行こうとした僕を朝比奈が呼び止めたから、男二人こんな狭い会議室でランチするという気味の悪い状況が生まれているのだ。
僕に促されて朝比奈は説教モードを解くと、腕を組んで神妙な顔をする。
「真琴のことなんだが」
やっぱりね。
愛妻家のこいつから悩みをもちかけられるなんてそんなことだと思っていた。
でも、僕は素知らぬ顔で意外そうに驚いてみせる。
「えー、なになに?本庄くんとケンカしたとか?」
「してない」
僕の言葉にムッと眉間に皺を寄せる。
なるほど、ケンカではないのか。
面白い予感がしたのに残念だと僕はコンビニで買ってきた弁当を頬張った。
「なんだ、つまんないなぁ。離婚の危機とか、そういうのを期待してるのに」
「お前、しばくぞ」
「ごめん、ごめん。で、何?」
不機嫌に拍車をかけ始める朝比奈に軽く形だけ謝って先を進める。
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